嘱託医がやって来た

先週金曜日、突然嘱託医がやって来た。
訪問は不定期で、いつも突然である。
私が入って2度目だ。

先生は93歳である。
帽子をかぶり、マフラーを巻き、杖をつき
お孫さんに付き添われながらも
ヨタヨタと入って来た。

1度の訪問は30分程度である。
本来は、不調な社員が健康相談をするものだが
実際はそんな社員はおらず
毎回、誰が先生の話し相手をするか揉める。
「じゃあオレが行くよ」
うちの課長が覚悟を決め、最初に応接室に入った。

20分後、出て来た課長が言った。
「ホラ、20分頑張ったぞ。
あと10分、誰か行けよ」
事務所にいた社員はなぜか急にみんな忙しそうだ。
ヒマな私が言った。
「じゃあ私が行きます!」
「お~!世間話してくればいいよ」

私の顔を見ると先生は言った。
「どっか悪いの?」
私は言った。
「いえ、そういうわけではないんですけど・・・
今は花粉症でとにかく目が辛くて」
「花粉症ね、それは治らないね。
あ~これから辛いね」

そう言うと持って来たカバンをガサガサと探し
薬の袋を出した。
「風邪薬と胃薬は持って来たんだけど
これは効かないかな・・・咳と鼻の薬。
あ~目ね、じゃあ胃薬も効かないね」
1人漫才か?

諦めた先生は言った。
「他に調子悪いとこはないの?」
私は口内炎ができていると言った。
「そりゃ痛いね、ビタミンCだね。
レモン食べなさい」
再び引っ張り出したのは黄色い顆粒である。
「これビタミンCね。これ飲みなさい。
注射があればしたげるんだけどね」
さらに注射器入りのプラスチックケースを出す。

ちょっと待った~!!
志村けんのコントではないが
変なところに刺されても困る。
私は焦った。
注射されるのは予想外だ。
けれどラッキーなことにビタミンCは無かった。
あ~良かったぁ。

注射を諦めた先生は
私の前に置かれた黄色い顆粒を指さして言った。
「それ、ビタミンCだったかな?」
私はコケそうになった。

その後、私が1人暮らしだと分かると
「そう、離婚ね。
夫婦は最後は諦めだね。諦め」
と言った。
「だいたい、生まれ変わったら
また一緒になろうなんて言ったって
誰もホントにそう思ってないね。
誰だって別の人と結婚したいに決まってるね。
自分もそうだね」
と力説である。
そして最後に言った。
「ご主人、亡くなったの?」

結局、この調子で子供の話も堂々巡りしたが
私はとても楽しい10分超を過ごした。
その後、車で待っていたお孫さんが迎えに来てくれ
来た時同様、ヨタヨタと帰って行った。

次回がいつなのか
誰も・・・たぶん先生自身も分からない。
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by shi_chan1024 | 2014-03-18 23:40 | 会社・転職 | Comments(0)